放射線遮蔽に用いる素材としては、今日まで鉛を使用する事が一般的でした。鉛は比重が高く放射線遮蔽度が大きく、さらに金属としては比較的加工も容易なため様々な場面で用いられてきました。しかし近年人体及び環境への配慮や価格の上昇などから、これに替わる使い勝手のよい放射線遮蔽素材が求められてきました。
当社では、タングステンの機能、特徴を活かし、シロキサン結合に依る安全性と相乗効果を兼ね備えた方法を採ることにより、紙などの繊維にコーティングする事で鉛を上回る放射線遮蔽性を有する素材を開発する事ができました。
2011 年3 月11 日の東日本大震災の後、3 月15 日より、放射性物質の飛散防止剤としてシロキサン結合を利用したコート液による実験を開始しました。同年5 月、福島市立渡利小学校のご協力を頂き、校庭に於いてのべ15 時間のテストをさせていただきました。このテストの結果、見込んだ通り、地表面の土壌を固めることができ、後の校庭の表面の土を取り除く除染作業と合わせて放射性物質の拡散を防ぐ目的を達することができました。
その後も環境省による除染技術実証事業の公募により、日本人の英知を集めた実験が進められています。
当社でも地表や家屋などに残るベータ線、セシウム137 や事故を起こした原子力発電所での作業で深刻なガンマ線からの防御などに利用できる素材の開発、性能の向上を目指しました。
放射性物質の除去法を確立し、安全で安心な生活を取り戻せるよう、集捉された放射性物質の完全なる遮蔽・保管技術を確立したいと考え、開発を進めてまいりました結果、放射線遮蔽効果のあるコート紙・コート剤の完成をみることとなりました。
放射線遮蔽超越コート紙・コート剤は、同じコーティング紙で異なる放射線に対応できます。 例えば、以下のデータは積層した紙の厚みが約 4mm のコート紙による各放射線の遮蔽について調べたものです。
下記3 点についても遮蔽効果が認められ、成績証明の発行を受けました。 (公的測定機関による)
放射線遮蔽超越コート紙・コート剤は、鉛板や金属だけのタングステン板などと比べて圧倒的に低い比重(3.4前後)で 同等以上の遮蔽効果を実現できます。
放射線遮蔽超越コート紙・コート剤は、紙や繊維素材その他を基材として用いる事ができるため、裁断・接着も容易であり、人にも環境にも優しい使い易い放射線遮蔽材として用途は多大と考えられます。
放射線遮蔽超越コート紙の遮蔽性能について検証を行う目的で検証ボックスを制作しました。
市販のクラフト紙を基材に放射線遮蔽超越コート剤をコートした放射線遮蔽超越コート紙(厚さ約300~350 ミクロン)を貼り合わせ効果的な厚さの容器として形作り、同様に上下も同様の厚さとなるように重ねました。
公的測定機関による「γ(ガンマ)線遮蔽試験」により、左のグラフのような結果が得られました。W(タングステン)板と同面積、同重量のコート紙の遮蔽率は、比重が軽く、積層枚数が多い方が、放射線遮蔽率が高くなることもわかりました。
公的測定機関に於いて、放射線遮蔽試験を行っていただきました。
超越化研では、当技術についてのご意見、ご質問、ご提案などをお受けしたく存じます。よろしくお願い申し上げます。